ぼくは設計の仕事をしていて、今はコーポラティブハウスがメインです。ひとつは設計中のものを担当していて、もうひとつは設計が終わって工事監理をしているところです。

設計中のものは昨年からやっていて、もうすぐ現場がはじまるので終盤ですね。工事監理中のものは今月末に引き渡しなので、最後の仕上げをしているところ。つくっているのはゼネコンや職人さんなんですけど、つくり方を打ち合わせしたり、現場でうまくできているかを確認したりしながら進めています。

設計と言っても、ぼくたちが担当するのはコーポラティブハウスの全体設計が多いです。全部の住戸設計もできればいいんですけど、すべてはできないので自分たちでは一部を担当しつつ、パートナーの設計者の方たちと一緒にやっています。

コーポラティブハウスなんで住宅を自由に設計できるのが売りなんですけど、募集の段階では自由設計の提案例みたいなものをお見せしています。普通にやると3LDKですけど、こんな感じに変えると、空間を有効活用できますよ、とか、こんなこともできますよ、って提案するんです。

それで申し込みをいただいたら、またゼロからプランを考えます。どんな住まいにしたいのかを伺いながら徐々にかたちにしていきます。提案を求められることも多くて、そういうときはいくつかのプランをお見せします。

視覚障がいのあるお施主さんがいらっしゃったことがありました。そこは丁寧にやらないといけないから、住戸設計も自分たちが担当して。もともと分譲マンションに住んでいらっしゃったんですけど、その不満を解消するためにコーポラティブハウスを選んでいただいたんです。パートナーの方からのサポートはありましたが、より分かりやすく伝えるために、触って分かるような模型のような図面を作ったり、言葉で丁寧に説明したり工夫しました。

みなさん、ライフスタイルに合わせて家づくりをされたい方が多いですね。分譲マンションだと、家に住まい方を合わせなきゃいけないけれど、やっぱり住まい方に合わせて家をつくるべきだと思うんです。それが家づくりの原点じゃないかな。

ぼくは公務員の家に生まれたんですよ。ものづくりが身近にあったわけでもない。ただ、工作とかは好きでしたね。

あまり小さいころからやりたいことがあったわけじゃなくて、高校生くらいのときになって、やっと建築設計ってカッコいいな、と思っていたくらいで。それで大学では建築を学ぶことにしたんですけど、もともと凝り性だったからなのか、ハマりましたね。ハマると、楽しいし、どんどんやりたくなる。

社会人になると青木茂さんのアトリエで３年弱くらい働きました。もう修行でしたね。なかなか将来が見えないから、しんどい思いもあったけど、最後に担当した物件がすごいポイントになっていて。

それはオーナーさんが自宅の目の前にある賃貸マンションを再生したい、というものでした。お父さまの代から引き継いでこられたもので、子や孫の世代にも残していきたいとのこと。

建て替えにすると、もともとの大きさでは建てられないとか、収益性の問題などもあったんですけど、どちらかというと建物に対するオーナーさんの愛が大きかったんです。

そのとき良かったのは、個人のオーナーさんの想いに直接触れながら仕事ができたこと。BtoBの仕事も多かったんですけど、やっぱりオーナーさんとか入居者さんに寄り添いながら仕事をしたいというところがあって。人と人、人間同士でコミュニケーションしながらやっていくというのは、昔はそんなに得意じゃないかなと思っていたんですけど、やってみないとわからないものですね。

事務所を辞めて１年くらいは、資格の勉強をしたり、海外を旅行したり、いろいろ考えていました。組織設計の事務所で働いている友達の仕事も手伝いに行ったりしながら。

そんなときに日本仕事百貨でコプラスの求人を見つけて。そのときは設計の募集はしていなかったんですけど、面白そうだなと思いました。それで調べてみたら、設計の募集もあることがわかって、縁あって入社することになりました。

コプラスに参加してから思うのは、人と人とで仕事をすることは、やっぱり面白いなということ。入社したての頃のことを知っている人には「当時は永久さん、余裕なかったよね」って言われることもありました。たしかに必死でやっていて。でも「最近は少し余裕が出てきたね」みたいなことも言われます。

お客さんと接していると「こういう人もいるんだな」というのがだんだんわかってくる。世の中にはいろいろな人がいるのが面白い。すごいセンスのいい方もいるし、たくさん刺激を受けながら、日々勉強になっています。単に図面を描くという仕事以外にも、面白さってあるんだな、と実感しています。

コーポラティブハウスって、まず自分たちが提案して、「それ、いいですね」って手を挙げてもらうもの。共感いただいた方たちと一緒につくっていくというのは、やっぱり楽しいですね。